絵画で見るギリシャ神話

ギリシャ神話の世界を絵画を通して見ていきます

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ゼウス(4):母娘と狂女物と「花と蛇」(ペルセフォネ)

さて前回の続きです。デメテルの娘ペルセフォネの話。このお嬢さんのことです。
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Rossetti, Dante Gabriel Proserpine. 1874

赤い唇と、意味ありげな視線にそそられますが、いずれにせよ憂い顔ですね。何を思っているのでしょうか? 視線は何に向けているのでしょうか? 手にザクロの実を持っています。今から食べようとしているのでしょうか? それとも、一口食べた直後でしょうか?

***

ペルセフォネは別名コレーとも呼ばれます。コレーとは「娘」と言う意味らしいです。デメテルの方も「メテル」の部分が「母」を意味します。銀河鉄道999のメーテルも鉄郎のおっかさんだったのです。デメテルのたった一人の愛娘、それがペルセフォネでした。

それにしてもペルセフォネお嬢様が憂い顔なのはなぜなのでしょうか?

そのわけは、このお嬢様、実は拉致されたお方だったのです。某国に(←違うって!) 

それにしても、誘拐されたにしては、妙な落ち着きの表情も・・・

***

自分の娘であろうが姉妹であろうが手を出すゼウスを筆頭に、ギリシャ神々の世界には狼がいっぱいです。デメテルお母さんは、そんな狼たちから守るため、娘を神々の目が届きにくいイタリアの先っちょにあるシチリア島に住まわせました。ペルセフォネお嬢様は、そこでひっそりと、しかし明るく清楚に生活していました。

他の地元の娘たちとペルセフォネが野原で花摘みなどをして遊んでいたある日のこと。悲劇が起きました。突然、地面が裂け、地中から現れた男にペルセフォネ娘は誘拐されてしまったのです。

この誘拐シーンの美術史上の基本は、どうやら次のベリーニの彫刻っぽいです。
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Gian Lorenzo Bernini, Pluto and Proserpina (1621-22)

嫌がって逃げようとするペルセフォネお嬢様の慌てぶり、それと頑として逃がすまいと捉えた体をしっかり押さえ込む髭もじゃ男の強い意志。みごとな表現だと思います。次のは、ちょっと物まねっぽい彫刻。
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17世紀の作品

このペルセフォネの略奪シーンはかなり衝撃的だったらしく色々な画家が描いています。ベリーニのよりちょっと前になるけど次のアーヒェンのもそれ。画質悪いです。
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AACHEN, Hans von 1615 The Rape of Proserpina

同じく画質が悪いですが、こっちのはペルセフォネ略奪にあわせて、周りが大騒ぎ状態。
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MAGNASCO, Alessandro 1749 The Rape of Proserpina

レンブラントも描いてて、それが次。
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Rembrandt. The Abduction of Proserpine. 1631.

ペルセフォネお嬢様、男の顔を引っ掻いてますよー。よほど抵抗が激しかった模様。

次のはオールスターキャストってことでしょうか?
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GIORDANO, Luca 1680s

右端が略奪されるペルセフォネ。中央に3つの頭を持つ怪物犬ケルベルスがいて追っ手がくるのを見張ってるし、左のボートは冥界への船なのかも。ちょっとおどろおどろしい光景でいろいろ出てます。よく見ると心霊写真並にヘンなキャラクタが続出かも。

略奪シーンはエウロパ(Europa)関連を代表にたくさんあるけど、どんな形、体形で女性をかっさらってくのが典型なのか? 先のベリーニのポーズが一番なんとなく安定したかっさらいかたのような気がする(笑)

***

さてこの略奪犯人は、ハデス君でした。ゼウスの兄です(弟かも)。

ゼウスの兄弟格の連中には、ポセイドン、ハデスの2人がいて、巨人族との戦いの後、新世界秩序構築の折に3人で役割分担を決めたのでした。その結果、ゼウスは地上の世界、ポセイドンは海上担当、そしてハデスは目立たないけど冥界担当となったのでした。ゼウスの兄弟格ですから結構、強力な神です。

冥界もかなり大切な世界なわけですが、何せ冥界。じめじめしてて、ちと魅力に欠けます。地上界でさんざん女遊びに興じるゼウスと比較すると冥界はそのチャンスすらありません。ハデスの境遇には少し同情できます。

***

「おい、ゼウス、ちっとは俺にも楽しい目を味わわせろよ!」
「ああ、ハデス兄さんですか、とはいっても冥界じゃねえ・・・最近の娘じゃ、なかなか・・・」
「俺さー、あの娘が気になってるんだが・・・」
「ありゃ、デメテルの娘だよ。ペルセフォネ。兄さんが欲しいといってもデメテルがなんて言うか・・・」
「まあ、そう言わず、俺がかっさらってくから、お前はその後の始末をよろしく頼むぜ!」

***

というわけで、先の略奪劇が起きたのでした。

ちょっと遠くから略奪劇を眺めた絵としては次。ペルセフォネを抱えて、スタコラサッサとかっさらってくハデスのウキウキ気分が伝わってきそう。
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Dell'Abate, Niccolo The Rape of Proserpine

ターナーの絵ともなると、もう神話の絵なのか風景画なのかわけ分からない。
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Joseph Mallord William Turner  The Rape of Proserpine, 1839

***

とにもかくにも、この突然の事件、母デメテルにとっては晴天の霹靂でした。愛する一人娘のペルセフォネが突然失踪したのです。パニックに陥りました。神々の中では地味な存在のデメテル。娘とペアで幸せ母娘を演じていたのに、その娘が消えてしまった!!!

半狂乱になって探し回ります。飲まず食わずで各地を歩き回ります。とても神とは思えない形相になっていきます。我が娘を半狂乱になって各地を探し回る母。

***

能には全然なんですが、能の1つのジャンルに「狂女物」というのがあるそうです。もち、最初はその言葉を見て「色狂い」を想像しましたが、ぜんぜん違いました(やっぱりね)。失踪した我が子や恋人、そして夫。それを探して狂いつつも歩き回る母・妻を主題とした出し物を「狂女物」と言うらしいのです。代表作には「隅田川」というのがあるようです。

***

次はコピペの文章です(出所を忘れちゃいました)。

 

能人買いにさらわれたわが子を尋ねて一人の母親が、はるばる京都から東国の隅田川までやって来た。彼女は恋しい子を思うあまり狂人になっている。隅田川の渡し守は、はじめは意地悪をして、母親を船に乗せないが、やがてその優しさにほだされ船に乗せてやる。船に乗っていると向こう岸から人を弔う大念仏の声が聞こえる。渡し守はあれは去年京都から下った人買いが病気になった子を捨ててそのまま奥州へ下ってしまった、その子はそのまま死んだので、この土地の人がそれを哀れんで念仏を唱えているのだと乗客に説明する。母は、それが自分の捜し求めている子だと気づく。舟が向こう岸に着くと、渡し守は母をその子の墓につれてやる。皆で大念仏を唱えていると、やがて人々の声に混じって亡くなった子どもの声が聞こえて来る。そこで今度母は一人で念仏を唱えるが、……。(『能「隅田川」を見る』より)



***

デメテルは、飲まず食わずで探索を続けました。ギリシャ各地に足跡を残していきます。オリンポスの12神に祭り上げられていたものの、そんな立場を投げ打っての探索。

仕事といえば、五穀収穫だが、それすら当然、上の空。収穫の神が神の立場を放り投げて、娘探しに狂うのです。地上世界は収穫を無くし、みるみる荒れていく。

そして、ようやくデメテルは真相を知ります。伝えたのは、太陽の神または光の神として知られるへリオスだそうです。

「デメテル様! 娘さんのペルセフォネをさらっていったのはハデス様です。そして、そのことはゼウス様もご承認なさっていたとか・・・」

デメテル、呟きました。「なんと言うことを! そ、そういうことだったのね!!」

このときのデメテルの気持ち、「新世紀エヴァンゲリオン」の葛城ミサトが碇ゲンドウの裏計画を知ったときの気持ちに匹敵するでしょう。(エヴァ・ヲタです)

***

デメテルの娘探しの旅は続きます。すっかりやつれ、ほとんど老婆の格好に転じて各地を転々とします。オリンポスの12神に名を連ねるほどの身分でありながらそれを明かさずみすぼらしい格好をして歩き回る。ほとんど、女・水戸黄門化してギリシャ各地を回ります。

あるとき、娘が見つからず、失意にがっくり朽ちようとしたことがありました。すると地元の若い娘たちが、その姿を見るに見かねて、ストリップまがいのことをして笑わせたことがあるそうです(このエピソードの絵が見つからない:残念)

元気が出たデメテルは、お礼にその娘たちがつかえる王家に住み込み、乳母として王子を育てることになったそうです。ついでに、お礼として、その王子を不死身の体にすべく、火にあぶって魔法をかける。でもね、そんなことをいきなりしたら、親はビックリするでしょう。それを目撃した王子の母が慌てふためくと、「神への畏敬の念が足らん」とばかりに開き直って、子供を放り投げたりしたそうです。やめろよ、デメテルおっかさん。

もう1つ。探索の旅の途中、あまりにお腹がすいて、ある民家に厄介になります。差し出された食べ物は粟のおかゆとか。デメテルとはいえ、放浪しててお腹が空いていたので、ガツガツむしゃぶりつきます。それを見た、その民家のガキンチョが指をさしてこう言いました。

「ガハハ、このばあさん、ずいぶん卑しいな。がっついてやんの!」

その瞬間が次の絵。
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ELSHEIMER, Adam

がきんちょ君、指をさしたのはまずかったかもな。デメテルおっかさんの逆鱗に触れちゃいました。そして、この少年は蜥蜴に変えられてしまいます。粟のブツブツが体表についたトカゲです。絵でも、足の方から少しずつ少年の体にブツブツができてるのが見えます。

***

さて、デメテル女神の放浪の間、地上の世界はどうなっていたかというと、デメテルが神務そっちのけのため、「収穫なし」状態になっていました。ようするに、地上は荒れ放題。

これで一番困るのは、もち、民衆。ですが神々も民衆からのお賽銭で生きている身ですから、ちと困ったことになっていたのでした。そして、最高責任者は、当然ゼウス。

「ああ、すまん、すまん、こりゃなんとかしねーとなー」

ゼウスよ、オメーももうちょっと生産者の気持ちを考えろよな。収穫のデメテルや、工業の我らがヘパイストスを重視しねーと自分の首を締めるぜー。エルメスだけじゃやってけねーんだよ。

***

というわけで、ゼウス仲介でハデスに渡りをつけ、ようやくデメテルの念願かなってペルセフォネ奪還の日が来ます。その瞬間が次の絵。
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Frederic Leighton  Return of Persephone 1891

使いに出されたのはヘルメス。彼の主導で、冥界に拉致されたペルセフォネが帰ってきます。待ちに待った、わが娘との再会。デメテル、両腕を広げて迎えています。感動の一瞬。

***

この絵、子宮から出てくる子供を描いているとも言われてるようです。迎えるデメテルは産婆さん(というか母)。帰還するペルセフォネは新生児。洞窟のような抜け穴は、産道。ふーん(もうちょっと狭いと名器なんだが・・・)

***

で、ペルセフォネ帰還後、すべてが上手く行ったかというとあにはからんやでした。

ペルセフォネお嬢様は、一年に3ヶ月以上は冥界に戻っています。公式的には、冥界で食べ物を口にしてしまったからと。ざくろを食べたらしいです。冥界にあるものを一口でも口にすると、地上界にはもどれなくなるらしい。(一番上の絵でペルセフォネお嬢様がもってらっしゃる食べかけのザクロが、それ)

だったら、当然、ずっと地上に戻れなくなるのだと思うのですが、1年に何ヶ月かだけは冥界にいなくてはならないとのことです(なんかヘンだな)

***

さて、ここで一番上のペルセフォネお嬢様の絵画。憂い顔のワケ、憂い顔なのに安心しきってる感じのワケに戻ります。

この夏、まともに読んだ本は1冊だけでした。団鬼六「花と蛇」だけ。(何と言う読書の偏り、少なさ:ギャハハ)。読んだ人は分かると思うけどジャパニーズSMのコテンです。

読んで驚いたことは、読む前には綺羅光の「ハードSM+陵辱+愛奴化」をすごいと思っていたのだけど、綺羅的な手練手管の数々から表現の語彙にいたるまで、ほぼその原形がこの「花と蛇」に凝縮されていたことでした。いま巷に溢れるSM小説はこの作品の物まねだ(言い過ぎか?)。欠点はSMのテクニックばかりが先行し、愛あるファックシーンが実に情けないこと(というか抜けない:笑)

で、当然といえば当然ですが、「花と蛇」では可憐なる女性達がつぎつぎに略奪され、監禁されます。しかし、時間とともに(とは言え、1ヶ月も経ってないけど)この淫魔の世界に馴染んでしまいます。全員、略奪者の愛奴化。

***

ペルセフォネは冥界の規則を知らずにザクロを口にしたとされています。ですが、アタクシにはそうは思えません。(ハデスとの生活で肉欲の甘美さを知ったからか)ペルセフォネはハデスと離れたくなかったのではないでしょうか。ゆえに、知っててざくろをかじった。その瞬間が一番上の絵です。この絵のペルセフォネの顔に覚悟の表情が見えてしょうがないのです。

次の絵も、二人の運命っぽい出会いを表している感じ。視線が運命的。
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Edmund Dulac  Pluto and Persephone

ペルセフォネの結婚式を描いた次の絵でも、ペルセフォネは満足げ。
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Henry Siddons Mowbray The Marriage of Persephone

***

「コレーや、いつでもかあさんはまっているんだよ」
「おかあさん、誤解しないでね。私、あの世界でも幸せなのよ」
「昔を思い出すよ」
「おかあさん、たしかに昔はなつかしいわ。でも、私には今も楽しいの」
「あの人はいやなひとじゃないのかい?」
「みんなが思っているほどひどい人じゃないのよ。むしろ、根はやさしいわ」
「そうかい・・・でも、かあさんは、ちょっと寂しいよ」
「大丈夫よ、かあさん。毎年、会いにくるから」

(2002/09/03掲示板掲載)

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ゼウス(3):ゼウス vs. デメテル

ゼウスはデメテル(Demeter)とも子供をもうけています。デメテルはクロノスとレアの娘で、結局、ゼウスの妹(?)、ヘラと姉妹です。近親相姦やりまくり。デメテルは穀物豊穣の女神。

ローマ神話ではケレス(Ceres)と呼ばれています。Ceresは英語読みすればシアリーズです。コーンフレークなどをシリアルズ(cereals)と言いますが、もともとこの女神に由来する言葉です。

デメテルとゼウスの間に生まれたのが、ペルセポネ(Persephone、ローマではプロセルピナProserpina)という美しい娘です。この人。
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Rossetti, Dante Gabriel Proserpine. 1874

ちょっと憂い顔ですねー。なんかワケありなんでしょうか?

でも、その話は次ということにして、今回はデメテルの方。豊穣の女神ということで、この神様を敬わないと、おまんまが食べられなくなってしまいます。というわけで、ちゃんと貢物も欠かさぬように! 次の絵では、デメテル女神の像の周りにいっぱい収穫物。
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Rubens, Peter Paul 「ケレスの像」 The Statue of Ceres 1615

下の絵では左側に立ってる赤服のデメテル女神。どう見ても、ちょっと怖そうなおばちゃんに見えます。
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Jacob Jordaens. 「ケレスへの献上」 An Offering to Ceres.

だがしかし、この絵で怖いおばちゃんと思うのはまだ早い。次の絵になると、狂気を感じます(ていうか笑ってしまいそうな怖さ!)
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MICHELE PANNONIO (active 1415-64 in Ferrara) 「ケレス戴冠」 Ceres Enthroned 1450-60

その点、次のワトーの絵では優しそうですね。右手に持つカマが実に鋭そう!
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Jean-Antoine Watteau. Ceres (Summer). 1712.

豊穣の神様ということで、春先にお祭りがあるのでしょうか? 次の絵は明るい春祭りの雰囲気。
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Sir Lawrence Alma-Tadema 「ケレスの神殿への道:春祭り」On the Road to the Temple of Ceres: A Spring Festival

次の絵では、デメテル女神(赤ドレス)がベニス市(右手半裸女性がベニス市を象徴)に祝福を与えてます。ペニスにではないです。
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Venerose, Paolo 「ケレス、ベニスを祝福」 Ceres Renders Homage to Venice 1575

Web Gallery of Artでの解説によると、この絵は天井画である模様。背景の青空と金色に輝く雲によって人物像が見事に浮き出されて見え、完璧なバランスで描かれているとのこと。特に、右手のベニスを象徴する女性像が美しいと。なるほどね~・・・確かに。でも、僕はやっぱ、この女性がつけているブラ(?)に興味が惹かれますが(魔法の帯を参照)。

***

デメテル女神はディオニソス(バッカス)男神と一緒に描かれることが多いみたいです。ディオニソスはお酒の神様。やっぱり美味しい食べ物(=デメテル)には美味しいお酒(ディオニソス)がパーフェクト・ペアです。

次の絵では真中の二人がデメテルとディオニソス。お酒を飲みすぎてちょっと乱れた状況?
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Bourdon, Sebastien「ニンフとサテュロスと一緒のバッカスとケレス」Bacchus and Ceres with Nymphs and Satyrs 1640-60

次の絵、デメテルが可愛らしく描かれてます。体に対して顔が異様にあどけないというか、小さい!小さすぎ!(笑)
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AACHEN, Hans von 「バッカス、ケレス、キューピッド」Bacchus, Ceres and Cupid

「ケレスとバッカスがいなければ、ビーナスだって凍えちゃう」という諺があるようです。英語では、Without Ceres and Bacchus, Venus would freeze. / Venus would grow cold.  

次の絵は、そのまんまのタイトル。
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GOLTZIUS, Hendrick  Without Ceres and Bacchus, Venus would Freeze 1599-1602

「食べ物(=ケレス=デメテル)とお酒(=バッカス=ディオニソス)がなけりゃ、せっかくの愛(=ビーナス=アフロディーテ)も萎んじゃうってものよ」ってことですね。もっと言えば、「ちゃんと食べたり飲んだりできる経済的基盤があった上での愛情」ってことでしょうか。この絵では食べ物とお酒があってビーナス奥様も嬉しそうです。

それに対して、次の絵ではアフロディーテ奥様もエロス坊ちゃんも凍えちゃってます。これは数少ない「みじめ」なビーナス奥様の絵の1つです。こんな目にあわせちゃいけませんね。
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Peter P. Rubens 「凍えるビーナス」Venus Frigida 1614

おかあちゃん、おれ、寒いよー、腹減ったよー、と言ってる感じのキューピッドが、ちょっと哀れです。

これに対して、次の絵では、デメテルとディオニソスに挟まれて嬉しそうなアフロディーテ奥様。このまま「2女X1男」の3Pに展開か? というか、3Pでも余裕綽々のアフロディーテの表情。ヘパイストスの入る余地ナシです。が、上の絵のように凍えさせるなら、どっちかというと、3Pで燃え盛ってもらった方が良いかもしれません。
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GOLTZIUS, Hendrick 「ケレスとバッカスの間のビーナス」Venus between Ceres and Bacchus

(2002/03/31掲示板掲載)

ゼウス(2):ゼウス vs. テミス(季節と運命)

ゼウスがメティスを飲み込んでアテナを生んだ後、彼の2人目の奥さんとなったのはテミス(Themis)でした。テミスというのは「掟、さだめ」といった意味だそうです。このテミスとゼウスから、ホライとモイライという3人娘が2ペア生まれます。計6人。

ホライ(Horai:ホーラの複数形)は「季節」の意味だそうです。メンバーは次の3人。
 ・秩序を表わすエウノミア(Eunomie)
 ・正義を表わすディケー(Dike)
 ・平和を表わすエイレネー(Eirene)
「季節」という言葉で、時間的秩序と、社会的秩序の2つの意味を象徴しているようです。英語の時間のhourという言葉は、このHoraiに語源があるという人もいました。

ホライの絵はなかなか見つかりませんでした。再掲になるけど、ボティチェリの「ビーナスの誕生」で、ビーナス奥様に右から布をかけようと駆け寄ってくる女性がホライの一人だそうです。
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「季節」の神と言うけど、この絵で布をかけようとしてる女性は、明らかに「社会秩序」の代表者としてのホライでしょうね。「ホライほらほら、アフロディーテ様、そんな裸の格好のままじゃ、困りますですわよ!」とか言いながら布をかけたに違いありません。まったくヨケーなことをしてくれるものです。

もう一組の3人娘モイライ(Moirai:モイラの複数形)は「運命」の意味だそうです。次の3人。
 ・クロト(Klotho):糸を紡ぎだす人
 ・ラケシス(Lachesis):分ける人
 ・アトロポス(Atropos):曲げない人
この3人娘は、人間の寿命を司っている模様。

役割としては、クロトが糸を紡ぎだして生命を生み出す。次にラケシスがその糸の長さを決める。最後にアトロポスが一旦決定された長さを決して変えないように裁断する。糸の長さが人の運命に相当する。

クロトから英語の「布」を意味するclothができたそうです。Moiraiからメリット(merit)ができたと書いてある本もあったけど、真偽は調べてみないと分かりません。

モイライはローマではパルカイ(Parcae:パルカの複数形)と呼ばれ、これが語源的にはfate(運命)という言葉につながっているそうです。
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Francisco de Goya y Lucientes The Fates (Atropos) (c.1819-1823)

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Elihu Vedder Fates Gathering in the Stars (1887)

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Unknown  The three Fates Oil painting on wood, Antwerp, c. 1590

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John Melhuish Strudwick   A Golden Thread Painted in 1885 Oil on canvas

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Unknown

ちなみに、プログレのELP(Emerson, Lake and Palmer)の曲に「運命の3人の女神(The Three Fates)」というのがありますね。

ゼウス(1):ゼウス vs. メティス(アテナ誕生)

さて、このコーナーでは、お盛んなゼウスの女性遍歴の数々をおさらいしたいと思います。目的は、女性とヤルためにゼウスがどんな手管を使ったか。その目録を作り、それを参考にして僕も楽しい人生を送ろうとするものです。冗談です。体が持ちましぇん。

***

さて、ゼウスの正妻はヘラですが、最初のお相手というか結婚相手はヘラではありませんでした。メティスという巨人族の一人でした。(と、ここでメティスの画像を貼れると最高なんだが、見つからない:泣)

メティスというのは、海(地中海)を神人化したオケアノス(Oceanus)の娘らしいです。「海洋」のoceanという単語の元になった神です。

メティスは語義的に「知恵」とか「思慮」とかの意味で頭がいい女神です。すべての意味で聡明です。さすがゼウスにふさわしい相手だったわけです。知恵や思慮が最高レベルの女性とのセックスというのも、いろいろな技を考案して楽しませてもらえそうで、あーこーがーれーるー!

ところが1つ問題がありました。予言です。メティスとの間に男児が生まれると、その父親よりも能力的に上回り、父の座を奪うことになるだろうとの予言があったのです。そりゃそうだ。最高レベルの知能がある女なわけだから、そこから男児が生まれたら、父親を上回るのは当然です。

でも、そこはそれ、ゼウスは女好きなので、後先考えずにメティスとやっちゃうわけです。で、ある日、メティスが妊娠したと知らされる。あー、ゼウス、涙目。

このとき取ったゼウスの処置の方法が笑えます。なんとメティスを食べちゃったのでした。 どうやって食べたかなんて知りません。が、ともかく食っちゃった。で、どうなったかと言うと、ゼウスは、あらゆる意味で聡明なメティスを食べたわけで、結果、ゼウスは知恵の点でも最高レベルの能力を獲得したのでした。文字通り、全能の神!

そーきたか(笑)。

ここから1つの教訓が得られますね。素晴らしい女性を相手にして、食べちゃえば、その女性が持っていた能力を獲得できる、と。

ちなみに、僕も、一応、性生活には色々バリエーションをつけてて、時々、「私を食べて」と誘われて食べちゃったりするんだけど、なんだか、最近、ボケが激しくなってきているのでした。変だな・・・。こっちも、たまに、食べさせちゃったりするんだけど、向こうの方も、大ボケかますようになってるし。おかしいなあ・・・。

***

ともかく、月日がたち、食べられたメティスは出産の時期になりました(食べられちゃっても、神一族である以上、死なないのですね)。ゼウスは、もちろん男なわけで普通の分娩はできません。さて生まれてくる新生児はどこから出てくればよいのでしょう?

やっぱ、(ゼウスに飲み込まれてしまってるけど)頭脳明晰な母親の子供です。頭にいたのでしょう。出産に際して、ゼウスの頭部を攻略します。

ゼウスは猛烈な頭痛に悩まされました。分娩時の苦痛は、僕には良く分からないのですが、大変な苦痛だというのは想像できます。ゼウスは、その分娩の苦痛を頭部に食らったのでした。こいつはたまらないでしょうね。

堪えきれなくなったゼウスは、タイタン族のプロメテウスという神(あるいは、話によると、我らがヘパイストスかもしれない)に頼んで頭を斧でかち割ってもらいます。

そこでイキナリ出てきたのが、次の、頭かち割り娘! アテナです。どどーん!
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Gustav Klimt 1898 Pallas Athene

おねえちゃーん、こわいよ~。生まれたときから甲冑に身を包みこわおもてで睨みつけてるよー。胸元で「あっかんべー」してるの、メドゥサだよー。じっと見ちゃダメだよー。体、固まっちゃうからねー。

母親自体が頭いいし、頭から生まれたってことで、アテナは頭脳明晰です。美術・工芸・芸術・科学・(頭脳的)戦いの神です。英語にbrainchildって言葉(頭脳の産物、考案物、発想)があるけど、まさにアテナのイメージ。その頭脳、俺にも分けてくれ~!

アテナはこの絵のタイトルのように「パラス・アテナ」と「パラス」という言葉をつけて呼ばれることがあります。なんでも、アテナが幼い頃、遊び友達にパラスというアテナと同じくらい武術に優れたものがいたそうです。そのパラスとアテナが一緒に戦争ごっこ風のケンカをしていたときでした。アテナが一撃を喰らいそうになり、それを見たゼウスがアテナに助け舟を出したそうです。でも、その結果、パラスがアテナの反撃にあって死んでしまったとのこと。

アテナお嬢たん、遊び友達を亡くした悲しみに、泣き濡れました。以来、自分の名前に、この名を冠するようになったとか。親が子供のけんかに口を出すなってことでしょうかね?

アテナはローマ神話ではミネルバと呼ばれてます。従えている動物はふくろう。ふくろうは英語圏では賢い人のイメージが定着してます。アメリカのアニメなどで先生役の動物としてふくろうさんが出てきますね。

アフロディーテ(9):お化粧奥様

この前、高橋裕子という人が書いた『世紀末の赤毛同盟』(岩波書店)という本を読みました。髪の毛の色や形の象徴的意味を中心として、絵画に出てくる女性像に隠れている意味をいろいろと論じていて面白かったです。

で、その中の一章に、「化粧する女たち」というのがあって、「化粧絵」についての論考があってほほーっと唸ったのでした。この「化粧絵」の分野でもビーナス奥様は大活躍で、盛んにお化粧姿を覗き見されています。例えば、次。
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Boucher 1751 The Toilet of Venus

先の『赤毛同盟』の本によると、西洋においては基本的に化粧は「悪」だったとのこと。お化粧で化けるとは、罪深い本性を表面的に隠すだけであってよからぬことなのだと。そう言った意見が繰り返し出てくる。

もちろん、そのような化粧否定論が繰り返し出てくるということは、逆にいえば、そんだけ化粧が流行っていたということなんですが、でも、建前としては依然として化粧=悪。
そして、そこからいろいろな象徴的イメージが派生してくるようです。まずは、化粧=悪を行う女性は「まっとうでない」女性というイメージ。まっとうでないと言うことは、つまり、娼婦とかそういった女性たちだというイメージです。

ビーナスには精神的な愛の至高性を表す「天上のビーナス」と、俗世間的愛欲を象徴した「地上のビーナス」の両面から捉えられていたらしいと前に書きましたが、そこからすると、お化粧するビーナス奥様の絵は、明らかに、「地上のビーナス」の方でした。

さらに、別のイメージとして、そのような本来プライベートであるはずの美のメンテナンス作業であるお化粧を見ている人物の視点が加わると、なお一層、エロっぽさが暗示されるようになってきます。・・・その・・・何と言うか・・・一夜共に過ごした後、「よかったよー! 最高だったよー! 僕は幸せだよー!」と思いながらお化粧修復作業に従事している女性を見ている男性の視点(なお、この段落の内容は上掲本にはないです。僕の印象です)。
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Titan A Woman at her Toilet

それにしてもお化粧のことは「トイレット」と言うんですね。したがって、「化粧絵」=「トイレ中の女性の絵」です。ゆえに今で言えば「女子トイレ盗撮モノ」に匹敵します。そう言えば「水浴画」も多いですが、あれは「女湯盗撮モノ」。

ともあれ、特別な関係になった男女の間ならともかく、普通の場合、トイレ(=お化粧)する場所は不可侵領域です。神聖な場所です。変身の儀式を行う場所です。ゆえに、男性から「トイレが長い!」とか「なにかとすぐにトイレに行く!」と文句を言われても、神聖な儀式を重んじる女性には全然こたえていないのでしょう。

もう2つ化粧画を。これらは少し清楚な感じ。
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John William Godward 1900 The toilet

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Albert Moore 1886 The Toilet

ビーナス奥様の場合、さすが美の女神だけあってお化粧メンテナンス作業は一人ではこなしきれません。前に触れた三美神にも手伝ってもらいます。うーん、さすが優雅なご身分! 高級エステ感覚!
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Guido Reni 1620 The Toilet of Venus

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Simon Vouet 1616 The Toilet of Venus

ビーナスじゃないけど、植民地時代ともなると御付きの人も黒人召使に代わります。
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Frederic Bazille 1870 La Toilette

上述の『赤毛同盟』でも指摘されていましたが、化粧絵では鏡がよく出てきます。化粧絵とは言え、化粧というのは化けている過程なのでなかなか絵になりにくく、むしろ化粧が完成した時点で鏡を覗き込んで確認しているところが絵になりやすいとのこと。しかし、この「鏡」というのが単なる小道具ではなくて、別の象徴的意味を持ったものとなってくるらしいのです。

つまり「鏡」に映し出された姿というものは、実体を欠き、次々と移ろっていくものであるという意味合いです。移ろっていくものである以上、鏡に美が映っていても、その美も束の間のものですぐに衰えてしまうであろう。つまり鏡は「無常」(ヴァニタス)を表すものとなっていきます。カラダがきれいでもすぐに衰えてしまうものだし、官能的な愛もむなしいものだよってメッセージ。僕の頭髪のことを言ってるのでしょうか? ああ、はかない。
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Rubens 1615 Venus at a Mirror

その意味で、次のヴェラスケスの絵で、鏡の中のビーナスの顔がボヤケているのが意味深。
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Valazques The Toilette of Venus

そして、次のティツィアーノの絵も。
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Titan 1555 Venus at her Toilet

この絵では鏡の中からこっちを見ているビーナスの視線にちょっとドキッとします。

確かに、鏡に映った美は移ろいやすくはかないものかもしれない。だが、このティツィアーノの絵のビーナスは、その圧倒的に豊満な女性美で、それを超越してしまっているような気がします。

「鏡の中の美が移ろいやすいものであるとして、それが何の意味があるの? いま現在、この女らしさを誇る容姿に自分は絶対の自信を持っているのよ。それが私の中ではリアルなの!!」 

そんなメッセージが感じられます。強いメッセージです。同じメッセージが上のルーベンスにもありそう。

さて、そのように開き直って圧倒的に女性らしい美を誇示された男性はどうなるでしょうか? 少し弱気な男なら、こりゃあもう、圧倒されてしまって、逆に、畏怖の対象、信仰の対象にすらなっていくと思われます。ああ~、その美しさ! 自信に満ちた生命力! すべてを超越する存在! 誰もかも君にひれ伏すだろうよ~! そして僕を好きに使って~! 僕を下僕にして~!

マゾの語源ともなったザッヘル・マゾッホという作家の代表作に『毛皮を着たビーナス』というのがあります。(大昔に書いた短い記事だけど、参考までにここ)。マゾというのは、最初は男性について使われたわけですね。で、この小説の冒頭に、上のティツィアーノのお化粧ビーナスの絵のことが出てくるのでした。この絵はこの小説の発想源となったと言ってよいと思います。

主人公のマゾ男性は、この絵を見てそこに理想の女性を見出します。「(男に)情熱の炎を掻きたてながら、自分は凍えている愛と美の残酷な女神」の存在を感じる。そしてその後、この主人公は、現実にそのような女神の化身であるワンダという未亡人と知り合いになります。そして、いつしか、彼女の虜となり、彼女に奉仕することにこの上ない喜びを感じるようになっていくのでした。ああ、なんとも…。


アフロディーテ(8):武装解除

さて、今回の絵画はボティチェリです。でもあんま好きな絵じゃありません。だって裸になってるのが男だけなんだもん。一応、この絵ですが。
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ボティチェリ 1480「ビーナスとマース」

前にも書いたことですが、アレス(=マース)は神々の嫌われ者的、争いと血と戦いを好む戦争の神。ではあるが、なぜか、アフロディーテ(=ビーナス)は彼を愛人にします。我等がヘパイストス君がいるにもかかわらず。もー、どーして、こんな乱暴者とくっついちゃうんでしょうね。やっぱ、カラダでしょうか。

今回のこの絵、明らかに、二人ヤッタ後ですね(笑)。ぐったりしたアレス君の姿は確かに同感すべきところがあります(笑)。

でも、驚くべきところは、アフロディーテ奥様の覚めた表情!!(こわ~い)。ちょっと軽蔑の視線がありますよ。「もー、あと3回はイカせてほしかったわ!ったくう!」と思っているのでしょうか? それとも「男ってちょろいもんよね」でしょうか? ともあれ、アレス君の商売道具の武器・武具の類は、寝ている隙にせっせか背後で運び去られてしまってます。愛欲で戦争回避ということでしょうか? それはそれで平和的なので僕は何も文句はありません。

うちのお話で、よく男性性器をtoolと表現する原文があります。「道具」です。あれも猛々しいときは攻撃的容貌を備えてますが、ひとたび愛欲に溺れた後は、もうすっかりしょぼしょぼですよね。武装解除っす。この絵のアレス同様、ぐったりばったり、ぐーすかぴーです。これもこれで平和的なので僕は何も文句はありません。

さて、このボティチェリの絵にデザイン的に酷似している絵があります。次のヤツです。
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Cosimo 「ビーナスとマーズ」

なんだか、アレス(=マーズ)がなよなよしてて気持ちワリ~(笑)虫や鳥がうるさそう。

ウサギがいます。アフロディーテの脇のところ。ウサギは、何かで読んだのですが、好色、セックス好きのヤリヤリ~というイメージがあるらしいです。英語のポルノでは、hump like a rabbitという表現が出てきます。この場合のhumpとは、「ハッ!ハッ!ハッ!」と体をせっせと動かす意味です。「ウサギのように好色にハッハッハッと励む」ということです。さらに、子を生むという意味のbreedというのもウサギと一緒に使われて、breed like a rabbitというのもあります。「たくさん子供を産む」という意味になるはず。この絵のウサギはアフロディーテにピストン運動お疲れ様と言ってるんでしょうか? だったら、アレスに言ってほしいよね。もうぐったりで・・・。

プレイ・ボーイのバニー・ガールのバニー(bunney)ちゃんはウサギですが、なんでウサギなんでしょ? ウサギのイメージがもとにあって「好きそうな女の子」ということで? そうかも。

この絵では幼児のエロス(=キューピッド)たちがアレスの武具で遊びまくってますが、それは次の絵でも同じですね。
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Carlo ???

どうして男女の愛欲シーンなのに子供をこうもわんさか書き込むんでしょう? そういえば江戸期の春画にも子供が脇の方でうろちょろしている絵がたくさんある。確か「豆すけ」とか言う名前じゃなかったかと。なんでなんだべが? 次の絵も似たような絵。
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プーサン 1628年 「マーズとビーナス」

これも子供うじゃうじゃ。右側にいる男女は誰なんだろう?

さて、いかにも「武装解除」という名にふさわしい絵画が次。
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ダビッド 1824年 「ビーナスと三美神に武装解除されるマーズ」

このダビッドという画家はフランスのアカデミーの重鎮だった人らしいです。きっちりがっちり古典を学べと正統派路線を推し進めた人で、芸術に必須と思われる逸脱とか、新しい創意とかに対抗した人らしいです。そのダビッドの遺作。古典路線の意地を見せた作品とか。三美神の顔の表情とか、わざとらしいなあとは思いますが、アフロディーテ奥様の背中とお尻の線がとてもとてもとてもエロいので僕は許します。アレスはお酒を持ってこられたり、アフロディーテ奥様にお花をもらったりしているうちに、武具をすたこらさっさと片付けられてしまってますね。アレスの股間の前で鳥がいちゃいちゃしてますが、これはゼタイ、くすぐったいと思います。

そいでもって、最後にこれ。
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ベロネーゼ 1570年 「アレスとアフロディーテ」

なんだか戦いから帰ってきた兵士の休息といった感じで、あーこーがーれーるぅ! エロスが茶目っ気をだして二人の足を紐で結んでいます。アフロディーテ奥様の表情も嬉しそう。ううう、こんな愛情満々のラブラブ・カップル状態を見せ付けられたら、我等がヘパイストスは出る幕ありません(しくしく)


アフロディーテ(7):お昼寝奥様

さて、今回はこの絵。

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Georgione 1504 "Sleeping Venus"

ルネッサンスに入り、裸体画がおおっぴらに描かれるようになってビーナスも盛んに描かれるようになります。 で、このジョルジオーネという画家のビーナス像は古典中の古典となった絵らしいです。

その後、この「横たわるビーナス」という主題で、いくつも絵がかかれることになりました。上品で、均整がとれた綺麗な裸婦絵だと思います。ちゃんと股間を手で隠してます。自慰をしているのとは違うようです(笑)。

さて、しかし、僕の関心はやはり、愛欲の女神であり浮気し放題のアフロディーテ(=ビーナス)を妻に持った夫のヘパイストスにあるのでした(笑)。

彼はどのような神だったのでしょうか?

その前に、大雑把に神々の系譜をおさらいしたいと思います。

ずっと前に、アフロディーテの誕生のところで、ガイア(大地)とウラノス(天)の交わりの話をしました。 あんまりウラノスのセックスがしつこいのでガイアは嫌気がさして、子供のクロノスにお父さんであるウラノスのペニスを切断させたこと。その切断されたペニスが海に落ちて、白濁が泡となり、その中からアフロディーテが生まれたこと。そんな話でした。

このお父さんのおちんちんを切っちゃったクロノスは、姉のレアと一緒になり、これまたたくさん子供を作ります。だが、予言により、クロノスは自分の息子に王位を奪われると知る。

そこで、クロノスは何をしたかと言うと、なんと生まれた子供を次々に食べちゃうのでした。ひどい話です。これには妻のレアも怒りを感じ、せめて末っ子のゼウスだけは助けてと、策略をめぐらせます。大成功、ゼウスは食べられませんでした。

さて、ゼウスは成長しました。そして、兄弟たちを助けに向かいます。まず、父のクロノスに毒を盛って、飲み込まれた子供たち、つまりゼウスの兄弟姉妹を吐き出させます。

次に、父方一派と戦争を起こします。10年近く戦いをし、結局、ゼウス一派が勝利、世界を治めます。

その後できたゼウス体制の世界は、神々の合議制世界でした。そのメンバーはクロノスとレアの子供たちと、ゼウスの子供たち(の一部)から成っています。

・まずはクロノスとレアの子供たちから

ゼウス : 大ボス。エロ親父。
ヘラ : ゼウスの姉であり、ゼウスの正妻。
ヘスティア : 「かまど」の意味の名。家事の神。
デメテル :  穀物の女神。
ポセイドン : ゼウスの兄。海の神。
ハデス : ゼウスの兄。冥界を担当。

・次にゼウスの子供たち

アテナ : ゼウスの頭から生まれた知性と戦略の女神。永遠の処女。
アポロン : アルテミスと双子。予言、音楽、医術、弓術などの神。
アルテミス : 山野を支配する狩りの女神。
アレス : ゼウスとヘラの息子。戦いの神。頭悪し(笑)
ヘパイストス : ゼウスとヘラの息子。あるいはヘラ単独の息子。工芸・鍛冶の神。
ヘルメス : 商売、旅行、泥棒の神。ゼウスの連絡役。

・ちょっと関係なさそうな神

アフロディテ : 彼女については省略。
ディオニソス : 酒の神。新興宗教の教祖。変人。

だいたい、こんなメンバーでお話が進みます。彼らはオリンポスの12神と呼ばれています。12人になりませんが、そういう細かいことは突っ込まないほうが良いのかもしれません。 なかなかヘパイストスの話に進みませんが、一応の前提事項の確認でした。

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ちょっと、一休みしてアフロディーテ奥様のお姿を拝見することにしましょう。

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Titan 1538 "Venus of Urbino"

見て分かるように、このティチアーノの絵は、先のジョルジオーネの絵をモデルにしてます。目を見開いてこっちを見ているのが、かえってそそられます。顔的には、個人的にこっちの方が好きです。まだ手で股間を隠してますね。後ろの方では子供は何をしているのでしょうか?

かようにお昼寝が好きなアフロディーテ奥様ですが、一方の、ご主人のヘパイストスは、オリンポスの他の神々が遊んでばかりいるのに対して、一日中、働いてばかりいるまじめ男です。鍛冶場で煤にまみれ、汗をかきながら、働きつづけているのです。基本的に働くのが大好きな男なのです。そして、技術も備えている。人間の最初の女性であるパンドラを作ったのも彼です。彼の作業場には、ロボットのような自動人形もいたと言います。言うなればワーカホリックの有能エンジニアのようなヤツです。

で、その間に、アフロディーテ奥様は、彼の兄のアレスの情婦となったり、他の男たちと愛欲に溺れているんだから(笑)。ヘパイストスには、かなり親近感を覚えますね。

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また、休憩タイム!

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Vecchino Title unknown

もう股間を隠すのはやめてしまったみたい(笑)。

さて、ヘパイストスは、醜い男とされています。神の中で一番醜い。また親近感を覚えます(笑)。 しかも、「足曲がり」とされています。

どうしてヘパイストスは足が悪いのか? これには二つ説があって、ひとつは英雄ヘラクレスを巡って父ゼウスと母ヘラが夫婦喧嘩をしたとき、ヘパイストスは母の味方をして、ゼウスの怒りを買い、両足を持ってぶん回された挙句、遠く海のかなたに投げ飛ばされ、着地が悪くて足を曲げてしまったと言う説。

もうひとつは、実はヘパイストスは母ヘラが、ゼウスがアテネを一人で生んだのを妬んで、彼女一人で産んだ子供であったのだが、生まれた子があまりにも醜いので、ヘラが彼を崖から突き落としてしまい、それが元で足が曲がってしまったと言う説。どちらにしてもひどい話です。

女遊びばっかりして、家では威張ってばっかりいるバカ親父の暴力に震える子供、あるいは浮気な亭主にヒステリックになった母親に虐待された子供です。アダルト・チルドレンですよ、ヘパイストスは。「足曲がり」というのも、象徴的であって、実は精神的トラウマを背負っていることを表しているような気さえしてきます(深読みしすぎ:笑)。

そんな、神々の中でも「何か」を背負っているような感じのヘパイストスが最高の美人のアフロディーテを妻にし、さんざん浮気される。なかなか、神話も深いものがあると思いました。

暗い話だったので、最後もお口直しでアフロディーテ奥様のお姿を。

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Titian "Venus and a Pianist"

もう隠すも何も、すっかり覗かれ放題じゃん(笑)

神話以外の話(1):覗き屋トム

全然ギリシャ神話と関係のない話題を一つ。まずは次の絵を。
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コリエー 「ゴディバ夫人」

「覗き屋トム」と言う言葉があります。英語でPeeping Tom。英語で覗き屋のことをこのように言います。「ピーピング」は覗きの意味ですが、じゃあ、なんで「トム」なんだろう。

これには次のような由縁があるそうです。

11世紀頃のイギリス。カベントリという町での話。イギリスのちょうど真ん中辺りにある町らしい。 その町の領主がレオフリック(Leofric)という人でした。いやなヤツで町の民衆に多額の税金を課そうと考えます。それを聞いて怒ったのが、このレオフリック領主の若奥様。ゴディバ(Godvia)様といいます。けなげにも、こんなことを言ったのでした。

「そんな税金をかけたら町のみんながかわいそうですわ。やめてください。ホントにそんな税金をかけたら、アタシ、裸になって町を馬に乗って歩きますですわよ!!!」

で、このレオフリック、どうしたかと言うと税金上げちゃうんです(大笑)。 僕はその理由を考えました。

(1)本当に財政が苦しかった(奥様に嫌われてもしょうがないという火急の状態だった?)
(2)サディストだったので、美人奥様に対する羞恥責めの一つ(うふふ、イジメがいがあるぜってか?)
(3)露出する奥様を見て楽しむ「妻物好き」の嗜好があった(笑)

この絵のイメージからは(2)ですね。ともかく、増税を実施したレオフリック。言った手前、約束を必ず実行しなければならない民衆の味方のゴディバ奥様。ああ、お可哀想な若奥様!

民衆はゴディバ奥様に感謝しました。「ウヘヘ、ただで若奥様の裸を拝めるぜ・・・」って感謝だと思ったら大間違い。やっぱ、イギリス民衆はきまじめです。

「みんな、奥様が馬で町を歩くときは、家の中に閉じこもって、奥様を見ないようにしよーな!」

と、すこぶる正しい連帯ネットワークを張ります。

ところが、とある仕立屋のトム君! 好奇心には勝てないんですよ。俺と同じだ。ただ一人、奥様が裸で町を行くところを覗いてしまったのでした。

彼トムの見た光景が上掲の画像です。トム君、結局、町のみんなに袋叩きにされてしまいます。これもちょっとかわいそうですね。当然な好奇心だと思うのに。

ともあれ、そういった卑劣な人物という意味も込められての「ピーピング・トム」という言葉でした。

ちなみに高級チョコレートのゴディバ。ゴディバ夫人の絵がそのトレードマークになっていますね。どうしてチョコレートとゴディバ夫人が関係するんだろう・・・?

アフロディーテ(6):妖しい母、アフロディーテ

前回のロットの絵のことをお話したとき、ある方からビーナス奥様とキューピッドが近親相関関係で妖しいとのお話を伺いました。それは確かに、あり得ます。ビーナス奥様、やっちゃいますよ。近親相姦など、なーんでもありません。ビーナス奥様にかかっちゃ。
なんでも、キューピッドは愛人アルスとの間に生まれたんですが、なぜかぜーんぜん成長しない。子供に羽根が生えた格好で、あちこち矢を放ってはいたずらもする。そこでナントカという神様にキューピッドが成長するようにと頼んだそうです。そんときも、やっぱ、その頼んだ神と寝てますよ、多分。

それはそれで良いんですが(どこが?笑)、成長を始めて、青年期に達したキューピッド君、イッチョ前に恋をしたんですよ。相手は美少女。プシュケ(Psyche)という女の子。で、ビーナス奥様、なぜか、異様に息子のキューピッドとプシュケの仲の邪魔をするんです。いいじゃないの、んなことしなくたってと思うんですがね。これは、アレです、肉欲がらみの嫉妬心が出てますよ。多分。

で、実際、ビーナス奥様とキューピッドのアヤシイ関係を示唆する証拠画像が、これ。

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アグノロ・ブロンズィーノ 1545年 「ビーナス、クピデ、そして時の神(淫楽のアレゴリー)」

キューピッドはもはや少年後期に入ってます。で、母親であるビーナス奥様のオッパイを触っています。指の間に乳首を挟んでいます。コリコリさせているかも。
第一、二人のアヤシイ目つきは、これ、なななんですかあ・・・? ったく、ビーナス奥様ったら、すごいんだから・・・

アフロディーテ(5):魔法の帯

前回、ボティチェリの絵のビーナス奥様の服にエロスを感じるなどと意味深なことをほざいていました。今回はそれについて(笑)。問題の服はこれでした。

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何も変わったことがないと思うかも知れません。が、エロの道に入って早何十年のアタクシには見えてしまうのです!

話が変わって、今日の絵。よーっ、出ましたビーナス奥様(着衣ナシ)!

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ロレンツォ・ロット 「ビーナスとキューピッド」

変わった絵です。キューピッド、ギリシャ語ではエロス坊ちゃん! なんとオシッコ引っ掛けちゃってますよ、奥様に。ゴールデンシャワーの世界ですか? こんな子供のときから、ずいぶんフェチの世界にのめりこんじゃって、だいじょーぶですかあ?

そんな心配した僕ですが、別に心配するほどのことではない模様です。 子供の立ちションは、この絵が描かれた当時「富が溢れる」を意味することだったそうです。オトナの男が似たようなことをしちゃうと大変なことになってしまいますが。

ビーナス奥様は、頭にかぶっている布から花嫁さんに扮してます。結婚祝に描かれた絵だそうです。他にも、手でささげているリースとか、右側にぶら下がっている貝とかいろいろ意味があるらしいですが、調べたけど忘れました。

あ、ビーナス奥様の腰の辺りに転がっている花はバラの花。バラの花が赤くなってしまったのはビーナス奥様のしわざです。これも(いつになるか分からないけど)そのうちご説明します。

で、で、で! 今日、この絵でムラムラとアタクシが興奮したところ。それは、奥様の胸の下に見える、腹巻のようなものです。ビーナス奥様ったら、いっつもハダカでいらっしゃるから、さぞかし、お腹をこわされることが多くって腹巻ご愛用なのね!
 
って、そういうわけじゃなさそうです。腹巻にしては、位置が上すぎます。むしろ、胸を持ち上げるような感じ。 これは実は魔法の帯なのです! ケストス(cestus)という名前だそうです。ビーナス奥様専用の持ち物です。どのような効力があるかと言うと、これを身につけると、その身につけた人の魅力を何倍にもアップして、誰もが虜になってしまうそうです。どーりで、ビーナス奥様、モテモテだと思ったよ。

さすがにお休みになるときは、さすがにこのケストスも邪魔になるのか、次の絵ではエロ、エロ、エロスお坊ちゃまに手伝わせてケストス帯を外してもらってます。

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サー・ジョシュア・レイノルズ 1788 「ビーナスの帯を解くキューピッド」

かわいらしいビーナス奥様ですね。眠たそうです。

この「誰もが私の虜よ」って魔法の帯ケストスも、時には人に貸してあげたりします。トロイ戦争当時、神々の大ボスゼウスの正妻であるヘラ奥様が借りました。 このヘラ奥様、なかなかのジェラシー奥様です。って言うか、大ボス、ゼウスが節操なくあっちこっちに女を作るのが原因なんですが。

それはそれとして、そのトロイ戦争当時、ゼウスにヨケーな事をして欲しくないと思ったヘラ奥様、ゼウスの気を戦局からそらすため、このケストス帯をまといました。たちまちゼウスも古女房に惚れ直し状態。そのありさまが、次の絵。

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アニバール・カラッチ 1600 「ユノとジュピター」

ゼウス、ウットリしてます。ヘラ奥様、ケストス着けて胸を見せつけるようにしてます。いや、なんだか、リボン状に結んで、「私を好きにして!」って我が身を捧げているようにも見える。 花柄のスカーフかなんかで、こんな格好で言い寄られたら、あたしゃ、メロメロになりそうですよ。なかなかエロいっす。

で、この絵なんですよ。これを見たとき、ケストスっていうのは女性の乳房を下から持ち上げるようにして、その豊かさを強調する衣装なのではないかと。ワンダーカップブラのアイデアは、すでにギリシャの時代からあったのじゃ?

翻って、冒頭のボティチェリの絵。

服は着てますが、その胸の周りの刺繍の帯状のもの。これはケストスじゃないのかって思った次第です。乳房の輪郭を強調してるもん。深読みしすぎですか?

先に「私を好きにして!」って身を捧げるようなことを書きました。そこまで行くと、次のような写真への連想は、あっという間ですよね。これでギリシャと我が国がエロ路線でつながります。

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